印象を決める瞬間 ― 面接で伝えるべきこと

面接の場では、入室からわずか数秒で印象が形づくられます。扉を開けた瞬間の姿勢、目線、声のトーンが大切です。緊張すると無意識に背中が丸まり、声が小さくなりがちですが、「明るい声」「背筋を伸ばす」「相手の目を見て挨拶」だけでも印象は大きく変わります。特に「よろしくお願いいたします」を一言、丁寧に発することができるかどうかで、あなたの誠実さや人柄が伝わります。

また、服装や髪型などの身だしなみは「清潔感」が最優先です。高価なスーツや派手なメイクではなく、「誰が見ても清潔で整っている」状態を心がけましょう。自分を良く見せようとしすぎると不自然になるため、シンプルにまとめることが面接全体の安心感にもつながります。

面接でよくある失敗は、あらかじめ覚えた言葉をそのまま話すことです。言葉が流れるようでも、相手には“用意した答え”だと伝わってしまいます。採用担当者が知りたいのは、あなたの本音と考え方。
たとえば「なぜこの職場を選びましたか?」という質問には、「家から近いから」ではなく、「実習で見た患者さんとの向き合い方に共感したから」など、具体的な経験を交えて答えるのが効果的です。多少言葉が詰まっても、自分の言葉で話す姿勢のほうが誠実さを感じさせます。

また、面接官が話しているときは相づちを忘れず、最後まで聞くこと。話の途中で割り込まないことは社会人としての基本ですが、意外とできない人が多いポイントです。

面接では必ずと言っていいほど、「志望動機」「自己PR」「学生時代に頑張ったこと」「将来の目標」を聞かれます。
それぞれの質問に共通するのは、“一貫性”です。
志望動機では「地域医療に貢献したい」と話したのに、将来の目標で「独立して自由に働きたい」と述べてしまうと、方向性がブレて見えます。自分の軸をあらかじめ整理し、「この道を選んだ理由」「これからの目標」「そのために学んできたこと」を一つのストーリーとして語れるようにしておきましょう。

また、面接官の「なぜそう思うの?」という深掘り質問に対応できるよう、答えの裏づけを自分の経験から準備しておくことも大切です。具体例があると説得力が増し、「この人は考えて行動してきた」と評価されます。

最後に「何か質問はありますか?」と聞かれたとき、「特にありません」と答えるのはもったいない瞬間です。
「新人研修で重視していることは何ですか?」「学生と社員で感じる違いはありますか?」など、前向きな質問をすることで、職場への関心や意欲を伝えられます。
ただし、「給与」「休暇」など待遇面ばかりを尋ねるのは避けましょう。これらは入職直前の確認で十分です。面接時はあくまで“志”を中心に据えることが大切です。

面接を終えたら、すぐにその内容をメモして振り返りましょう。どんな質問に詰まったか、どの答えがスムーズに話せたかを整理することで、次回の改善点が明確になります。
また、面接官の反応を思い返して「笑顔が返ってきた質問」「少し反応が薄かった部分」などを分析すれば、次の面接の精度が格段に上がります。
面接は一度きりの勝負に見えますが、経験を重ねることで確実に上達する“技術”でもあります。

最後に忘れてはいけないのは、「完璧さ」よりも「誠実さ」。
間違いを恐れて言葉を選びすぎると、あなたらしさが消えてしまいます。採用担当者は、職場に“人”としてなじめるかを見ています。笑顔で受け答えし、素直な姿勢で話すことが何よりのアピールです。
面接とは、あなたと職場の“出会い”の場。自分の価値観や思いを、自分の声でしっかり伝えましょう。