「履歴書を書く」という第一歩──文字にすることで、自分を知る

履歴書を書くのが、なぜこんなに難しいのか?

履歴書を書くという作業に、どうしてこんなにも手が止まってしまうのでしょうか。
それは「自分をどう見せればよいか分からない」「何を書けば“正解”なのかが分からない」という戸惑いに直面するからです。とくに、学生にとっては人生で初めて“自分のこれまで”を評価される場になることも多く、うまく書けないのは当然のこと。情報を書き込むだけの「作業」に見えて、実は非常に高度な“自己理解”と“表現力”が求められているのです。

しかしこの「難しさ」こそ、履歴書に向き合う価値を裏づけるものでもあります。苦労するからこそ、自分が本当に考えていること、目指している方向性が浮かび上がってくるのです。だからこそ、最初から完璧なものを書こうとせず、「まず向き合ってみる」ことから始めましょう。

書くことで“自分”が見えてくる

履歴書を通して、自分が歩んできた道のりを「見える化」することができます。
部活動、アルバイト、ボランティア、授業、プライベートな挑戦……。日々の中で当たり前になっていたことも、改めて書き出してみると、実は一貫した価値観や行動パターンがあることに気づくはずです。たとえば「人と関わることが好き」「困っている人を放っておけない」「物事を効率よく進めるのが得意」といった、自分の“核”が浮き彫りになってきます。

この「自分の軸」に気づけると、履歴書だけでなく、面接での発言や進路選択にも一貫性が生まれます。履歴書を書くことは、未来の自分に向けた“地図”を描くことでもあるのです。

完成度よりも“向き合う姿勢”が大事

「見栄えのよい文章」「模範解答のような文体」を追い求めすぎると、履歴書が“誰でも書けそうな”内容になってしまいます。それよりも大切なのは、その内容に“自分らしさ”があるかどうか。たとえ文章が少し拙くても、自分自身の言葉で、自分の体験をきちんと掘り下げた内容であれば、読み手にはしっかり伝わります。

企業や採用担当者が見ているのは、表面的な完成度ではありません。むしろ「この学生は、自分とどう向き合ってきたのか」「どんな姿勢で働こうとしているのか」といった、内面の“成熟度”です。書き直しを重ねる中で、自分に正直になっていくプロセスこそが、もっとも重要な成長の証なのです。

一歩目は、“書き始める”ことから

履歴書に限らず、文章を書くという行為には、最初の一文を書き出す“ハードル”があります。しかし、完璧な出だしを求めすぎると、永遠に書き始められません。たとえ稚拙でも構いません。「部活動で大変だったこと」でも「バイトでやらかした失敗」でも、「あのとき悩んだこと」でもいいのです。思い出を文字にすることが、履歴書の入り口になります。

書くうちに、内容が自然と整理され、最初は「ただのエピソード」だったものが、やがて「自分の強み」や「価値観」に変わっていく瞬間があります。履歴書は、自分と会話するためのツールでもあります。難しく考えすぎず、まずは手を動かしてみてください。その先に、今の自分が見えてきます。