“将来像が描けない”状態から始めるキャリア設計――不安を前提に考える設計のしかた

将来について考えようとすると、「やりたいことが分からない」「目標が定まらない」という感覚に立ち止まってしまう人は少なくありません。キャリア設計という言葉自体が、「明確な将来像を描けている人のためのもの」のように感じられることもあります。しかし実際のキャリア形成は、最初から完成された目標がある人よりも、迷いや不安を抱えたまま考え続けた人のほうが、結果として納得感のある道を選んでいるケースが多く見られます。この回では、「将来像が描けない状態」を否定せず、そこからどうキャリア設計を始めるかを整理します。

将来像が描けないのは「準備不足」ではない

まず理解しておきたいのは、将来像が描けないこと自体は異常でも欠点でもない、という点です。学生やキャリア初期の段階では、経験値も情報も限られており、実感を伴った将来像を持てないのは自然な状態です。にもかかわらず、「早く決めなければならない」「周囲は決まっているのに自分だけ遅れている」という意識が、不安を過度に大きくしてしまいます。

キャリアは知識だけで設計できるものではありません。現場を見て、働き方に触れ、人との関係性を経験して初めて、具体性を帯びていきます。つまり、将来像が描けないのは準備不足ではなく、まだ材料が揃っていない段階にいるというだけの話です。ここを正しく認識することが、キャリア設計の出発点になります。

不安は「漠然」とさせたままにしない

将来への不安が強いとき、多くの場合その中身は曖昧なままです。「なんとなく不安」「失敗しそうで怖い」と感じていても、何がどう不安なのかを言語化できていない状態では、思考は前に進みません。キャリア設計では、不安を消そうとするのではなく、分解して扱うことが重要です。

たとえば、不安は「収入面」「技術面」「人間関係」「働き続けられるか」といった複数の要素に分けられます。一つずつ見ていくと、「これは今すぐ答えが出なくてもいい」「これは情報収集で軽減できる」と整理できるものが多く含まれています。不安を具体化することで、対処可能な課題と、時間をかけて考えるべきテーマが切り分けられ、思考が現実的になります。

将来像は「完成形」ではなく「仮置き」でよい

キャリア設計というと、「最終的なゴールを明確に描くこと」が求められるように感じられがちです。しかし実務的には、将来像は完成形である必要はありません。むしろ、現時点では仮の将来像を置くほうが、行動につながりやすくなります。

仮置きの将来像とは、「この方向性なら違和感は少ない」「今の自分が興味を持てる範囲」といったレベルのものです。重要なのは、正解かどうかではなく、行動を選ぶ基準として機能するかどうかです。仮の将来像をもとに動いてみて、違和感があれば修正する。その繰り返しが、結果的に自分らしいキャリアを形づくっていきます。

行動を先に置くことで、軸は後から見えてくる

将来像が定まらないと、「決まってから動こう」と考えてしまいがちですが、キャリア設計では順序が逆になることも多くあります。小さな行動を積み重ねる中で、「これは続けられる」「これは違う」といった感覚が蓄積され、そこから軸が浮かび上がってきます。

見学に行く、話を聞く、短期間でも現場に触れる。こうした行動は、将来を決めるためというより、「判断材料を増やすため」に行います。行動の結果として得られる実感は、頭で考えた将来像よりもはるかに信頼できます。動きながら考える姿勢こそが、現実に耐えるキャリア設計につながります。

「決めすぎない」ことがキャリア初期の強みになる

キャリアの初期段階では、あえて決めすぎないことが強みになる場合があります。柔軟性を残しておくことで、環境の変化や新たな出会いに対応しやすくなるからです。最初から一つの道に固執してしまうと、合わなかったときに軌道修正が難しくなります。

重要なのは、何も考えずに流されることではありません。仮の方向性を持ちつつ、経験を通じて更新していく姿勢です。将来像が描けない状態は、可能性が閉じていない状態でもあります。不安を抱えたままでも、考え続け、動き続けることで、キャリアは少しずつ具体性を帯びていきます。そのプロセス自体が、キャリア設計の「基本」だと捉えてください。