伝わる文章力 ― 履歴書で「会ってみたい人」になるための考え方
履歴書は「正解を書く書類」ではない
履歴書や応募書類を書く際、「失敗しない書き方」や「正しい表現」を探そうとする人は少なくありません。しかし、履歴書は試験の答案ではなく、自分という人間を知ってもらうためのツールです。空欄を埋めることや、きれいな言葉を並べることが目的ではありません。採用側が見ているのは、文章のうまさよりも、その人がどんな考え方を持ち、どんな姿勢で仕事に向き合おうとしているかです。形式を守ることは大切ですが、それ以上に重要なのは、書かれている内容に一貫性と納得感があるかどうかです。履歴書は「評価されるための書類」ではなく、「対話のきっかけをつくる書類」だという意識を持つことが、質を高める第一歩になります。

志望動機は「気持ち」ではなく「理由」を書く
志望動機でありがちなのが、「雰囲気がよさそう」「成長できそうだと感じた」といった感想で終わってしまうケースです。これらは気持ちとしては自然ですが、それだけでは他の応募者との差は生まれません。大切なのは、「なぜそう感じたのか」「自分のどんな経験や考えと結びついているのか」を言葉にすることです。見学で見た具体的な場面、共感した考え方、これまでの学びとのつながりなどを整理し、自分の視点で書くことで、志望動機は一気に説得力を持ちます。志望動機は熱意を伝える場であると同時に、「自分はこの職場を理解しようとしている」という姿勢を示す部分でもあります。
自己PRは「強みの説明」ではなく「再現性の提示」
自己PRというと、自分の長所をアピールする場だと考えがちですが、単なる長所の列挙では印象に残りません。採用側が知りたいのは、「その強みが職場でどのように発揮されるのか」「再現性があるのか」という点です。そのためには、結果だけでなく、その過程や工夫を書き添えることが重要です。たとえば「努力できる人」ではなく、「どのような課題に対して、どんな工夫をし、どう乗り越えたのか」を具体的に示します。施術者としての経験が少ない段階であっても、学びへの姿勢や取り組み方は十分に伝えられます。等身大の経験を、具体的な行動として書くことが、信頼につながります。
全体を整える――読み手を意識した構成にする
履歴書全体を見たときに、志望動機と自己PR、学んできた内容がバラバラに見えてしまうと、「何を大切にしている人なのか」が伝わりにくくなります。書き終えたら、全体を通して読み返し、一つの人物像として違和感がないかを確認してください。また、文章量や表現を詰め込みすぎないことも大切です。丁寧に書かれていても、要点がぼやけてしまうと伝わりにくくなります。履歴書は完成度を競うものではありません。「この人と一度話してみたい」と思ってもらえるかどうか、その一点を意識して整えることで、書類は次のステップにつながる力を持ちます。

